わくわくともふもふと舞台裏

2016年にかえる舎の活動は始まりました。
海のものとも山のものともわからないのに「何かおもしろう!」と集まってくれた20人の生徒たち。
彼ら、彼女らがかえる舎という道を作ってくれました。
そんな初代の生徒たちと一緒に地場産業振興をテーマに取り組んだ活動がありました。
今でもとても思い入れが深い活動です。
かえる舎の活動の舞台裏をお届けするプロジェクトヒストリー。
第1回目は初代生徒たちが取り組んだ「もふもふワークショップ」です。
どうぞ、ごゆっくりご覧ください。

01 . はじまる

観光と織物の街、富士吉田市。
富士山が有名ですが、江戸時代から続く伝統の織物産地でもあります。
かえる舎の初代の生徒たちは織物をテーマに活動をしました。
親戚が織物関係の職に従事している生徒もいたり、身近なテーマでした。
小学校の頃から、授業の一環で地元の織物についての勉強もしてきています。
そんな地場産業について何ができるか、考えるところから始まりました。

織物工場、通称「機屋(はたや)」の中の様子

02.見つける

最初は何軒か工場にお邪魔させていただき、職人さんたちからお話を聞かせていただきました。
わかったことは、ネクタイやストールやスーツの裏地などオシャレフォーマルな生地をたくさん作っていること。
一枚の生地を仕上げるために、糸を作る、糸を染める、生地を織る、生地を整えるなど多くの工程を経ていること。
そして、それを想いを持って受け継いできている職人さんたちがとてもかっこいいことが印象的でした。

職人さんの真剣な眼差しと興味深く聞く生徒

中でも、工場で生徒たちの興味を引いたのは「捨てみみ」と呼ばれる端材でした。
生地を整えるために生まれる切れ端のことを指します。

生地の端を整えて出てくるふわふわの「捨てみみ」
this is 「捨てみみ」。織物の端材。

いわば産業廃棄物だそうです。
でも、もふもふできらきらしていて、「かわいい」「きれい」「もったいない」と感じたようです。
職人さんにとっては捨てることが当たり前でも、高校生にとっては宝物のように見えていました。職人さんにお願いして、いただけることに。「どんどん持ってってよ!」とたくさんいただきました。たくさんの端材を抱えて、どうしようとワクワクしながら工場を後にしま

ええ!こんなにいいの!?の図

03.企画する

学校にもふもふを持ち帰り、印象に残ったことを振り返りながら、何ができるか考えていきました。
大事にしたいポイントは2つ。
①職人さんたちの思いが伝わる。
②かわいいってことを知ってもらいたい。
それを踏まえて話し合い、「小さな子が織物のかわいさに触れられるワークショップ」をしようと企画がきまりました。
織物に触れるワークショップを実施することで、かわいいということを知ってもらいながら、ワークショップ中に職人さんたちから聞いた織物のことを伝えられると考えたからでした。

たくさんもらった捨てみみ!

そして、ちょうどいいタイミングでイベント出店の機会もいただきました。
さて、やりたいことも、本番となるイベント出店も決まりました。
さあ、あとはやるだけ。
のはずでした。
生徒たちと一番苦心したのは、小さい子が楽しめるワークショップが浮かばないことでした。
手元には、もらってきたかわいい捨てみみがたくさんありましたが、それを活用して何をしたらいいか、全く思いつきませんでした。

アイディア検索、スマホに感謝
これはきっと考えてるふり
とりあえず、巻き付けてみる
何がどうなったのよ…

だめみたいです。これはこれで楽しそうだけども。

04.助けてもらう

全く思いつかなかったので、地域内の織物のデザインをされている方にアイディアをいただくべく学校に来ていただきました。

救世主登場、織物スペシャリストのお姉様方

企画を説明したところ、それならばと伝授していただいたのは、「みみで作るもふもふブレスレット」でした。
耳を折り合わせていくことで、ブレスレットを10分程度で作れる簡単なワークショップ。

こういうブレスレットです、きゃわ

これならば小さい子でもできると、大喜びです。
端材をわけてもらったり、アイディアをいただいたり、地元の織物のみなさまに支えられて企画が進んでいるという実感が生徒たちにも湧いていました。
お世話になった方々のためにも、ワークショップを成功させたいという思いが高まっていました。
イベントまで2週間。怒涛の準備の始まりです。

05.準備する

毎日のように放課後集まっては準備を進めました。
ワークショップの説明書を作る生徒、教えられるよう友達に試してみる生徒、ワークショップに向けてみみを整える生徒など。

ブレスレットに使う材料を整理したり
ブレスレットに必要な長さに捨て耳を合わせて
切ってまとめたり
ワークショップの説明書をつくったり
会場の装飾を考えたり
もじゃっとした作品作ったり
捨てみみを解いたり
ん?これは何?

学園祭さながら、みんなで分担して準備していきました。
何をやっているんだろうと、同級生たちも興味を持って手伝ってくれたりと、わいわいがやがや準備が進んでいきます。
準備の時間こそ楽しかったという生徒もいるくらい、充実した時間でした。
さあ、本番。
来てくれるかなあ。
大丈夫かなあ。
ドキドキワクワクです。

06.いよいよ本番

いよいよ本番です。
来てくれるかな。
足りないものはないかな。
ドキドキワクワクで会場の飾りつけ進めます。

捨てみみの暖簾
「ちびっこには風船でしょ」
真面目に準備したり
ふざけて全然やらなかったり
それでもブースは完成に!
1人1人、ブレスレットもつけた

会場の飾りつけも無事間に合い、イベントが始まります。
このみんなの素敵なところはみんなのチーム感。
ワークショップを教える生徒、受付担当の生徒、会場内で宣伝する生徒、誰1人欠けても意味がありません。
誰からともなく「円陣組もう。」という声。

始まってみると、大盛況!
途切れることなく小さな子からおばあちゃんまで幅広い方々が興味を持ってくれて参加してくれました。

夢中で織物に触れる
「なに、これ、かわいい」と集まってきてくれます
教える側も一緒に楽しみながら

その数100名以上。
すごい!

ブースの机の上はカラフルな捨てみみが並ぶ
捨てみみの暖簾もすごく綺麗

ワークショップをしていく中で、「もっとこうした方が伝わるよ」、「さっきこんな質問もらったよ」など生徒同士で改良を重ねながら織物の魅力を伝えていきました。
そして、「かわいい!」「私もほしい!」と聞こえてくる声が一番嬉しかったみたいです。
やったね!みんな、すごい!

片付けながら余った捨てみみを整理

07.ふりかえる

大盛況のうちにイベントが終わり、大変だったけど、充実したイベントまでの日々をみんなでふりかえりました。
「本当に心からただ楽しかった。実際に織物や、織物に携わっている人に直接的にふれあえる貴重な体験ができた。色んな人と関わって心がぽかぽかになった。」
「織物のきれいさ、可能性、人の暖かさ、マチの良さを感じることができた。それをもっと伝えていきたいと思った。」
それぞれに感じたことがあったようでしたが、みんなから共通で出てきたのは「仲間」というキーワードでした。
一緒に仲間と活動してきた時間がみんなの一番の思い出みたいです。
地域に残る理由はいろいろあります。
でも、きっと、一緒にこの地域で何かやりたいという仲間がいることはとても大きい理由なのではないでしょうか。

若い世代が地域に夢中で取り組む、素敵な時間を見させてもらいました。
みんなの未来がカラフルなものになるよう、応援していきたいです。

EDIT

斎藤和真

かえる舎代表。お笑いと川とラーメンが好き。最近任天堂switchを買ったらしい。