みんなで作ったハタオリ号の舞台裏

かえる舎が始まった2016年から、早5年。
この5年間で、学校の授業は大きく変わり始めました。
その背景には、2018年の3月 高校の学習指導要領が改定され、授業内でも「地域」を学ぶ時間が増えたことがあります。
多くの学校で「地域教育」が組み込まれるようになり、大学入試でも「地域貢献」「自主的プロジェクト」などが評価されるようになってきました。

そして、2020年からは、新型コロナウイルスの影響により、これまでと全く違う学校生活となり、部活もお昼休みの過ごし方も学園祭も多くが新しい方法へと変化していきました。

時代や生活様式が変わり続ける中、生徒たちと一緒に、地域に関する「授業」から「課外活動(かえる組)」まで、取り組んだ活動があります。

かえる舎の活動の舞台裏をお届けするプロジェクトヒストリー。
第2回目は、生徒たちが取り組んだ 交通×地場産業のプロジェクト「ハタオリ号」です。
どうぞ、ごゆっくりご覧ください。

01 . はじまり

この活動のきっかけは、富士北稜高校の総合的な探究の時間です。
地域の事業者より「高校生と一緒に考えたい 問い・課題」を提示していただき、それに対して高校生が課題を解決するためのアイデアを考え、提案する授業を実施しました。

その中で、
交通のテーマでは、富士急バス株式会社様より「地域に必要とされるバス会社とは、新しい公共交通の使い方」
織物のテーマでは、繊維産業活性化地域おこし協力隊(森口理緒様)より「地場産品(織物)の身近な活用方法」についてお話しいただき、合計で約40名生徒たちがそれぞれのテーマに取り組みました。

初回の授業風景の様子。地域おこし協力隊の森口さんより織物の概要と、高校生と考えたい課題を話していただく。

授業の進行はすべて、総探係と呼ばれる生徒たち。
授業後に来週の授業進行を考え、先生と相談し、プリントを配布する係です。

この総探係のおかげで授業ができたと言っても過言ではありません。

毎回、先生ように授業を進めてくれるメンバー。
授業内で大事な部分は、黒板にも記入する。

02.企画する

各団体よりお話しいただいた課題に対して、生徒たちは課題を解決するアイデアを考えます。

合計で10時間の授業時間の中で、
今取り組んでいる活動について深く調べたり、ターゲットを考えたり、自分たちや身の回りの人が日常生活の中でどういうふうに思っているのかを聞いてみたりしながら、取り組んでいきました。
最終的には、1グループ(2〜4人)で1つのアイデアを考えて、紙芝居のような形でアイデアをまとめました。

ワークシートに従って、調べた内容を記入している時の写真。
イラストが得意なメンバーは紙芝居にイラストを記入。

03. 提案する

講師の方からお話を聞いてから約2ヶ月後。
生徒たちは自分たちが考えたアイデアをまとめ、講師に提案をします。

提案内容は、以下の4つです。
①タイトル
②ターゲット
③内容
④特徴(オリジナリティ)

提案した内容はその場で、講師よりフィードバックをいただきます。
講師の方には、生徒等のアイデアの良さ・これまでの取り組みでのフィードバックやアドバイスなどを踏まえながら、生徒たちにお話しいただきました。

短い期間ですが、情報をまとめ、自分たちの考えを整理し、発表まで実施した生徒たち。
どのテーマでも、高校生らしいアイデアが発表されました。

授業詳細は、こちら

実際に発表している時の様子。

04. 仲間を集める

授業内では提案するまで、をみんなで取り組みました。
その後、各団体の皆さんとかえる舎で、取り組みやすさ、高校生だからこそできることを意識しながら実現可能そうなアイデアを相談しました。

交通と織物のテーマについては、どちらのテーマの提案でもあった「地場産業の織物を使ってバスを装飾する」というアイデアを実現することにしました。
その後、有志で活動を実施したいメンバーを集めると、女の子6人が集まってくれました。

それぞれの参加した理由は、以下の通り。
「自分たちが飾ったバスが走るのが嬉しいから」
「のりこさんに言われて楽しそうだったから」
「なんとなく興味があったから」
「楽しそうだったから」

企画したメンバーも、全く違うテーマを先行した人も、言われたからきてくれた人もいろんなメンバーが参加してくれたことがとても嬉しかったです。
この6人と、夏休みから活動を始めました!

仲良し6人娘。

05. 調べる

最初の活動は、バスの車内を計測すること。

今回、バス装飾を行うバスは「タウンスニーカー」の3台のバスです。

「タウンスニーカー」とは、1回の乗車100円で市内をどこでも回ることのできる便利な市内循環バスで、高齢者がお買い物や病院に行く際や高校生の通学にも多く使われています。

そのバスの椅子のサイズ、椅子と椅子との距離、吊り革の大きさや長さ、近くにある掲示板のサイズなど、隅々まで計測しました。

その後、どんなところを装飾したらかわいくなるか、織物が目立つかを、実際に椅子やバス車内に生地を当てながら考えました。

様々な地域の他の装飾事例や生徒たちのアイデアと、富士急バスの担当者さんとの相談の上、
【吊り革の部分】と【バス広告】、【運転手後ろの掲示板部分】などに設置させていただくことが決まりました。

バス車内の様子をメモ。椅子の数やサイズを記入。
みんなで一緒に計測。
すでにある織物の生地を使ってバス内に装飾。

06. 生地を選ぶ

次の活動は、富士吉田の地場産品「織物」の中から、バスの空間に合う生地を探すことでした。

バスの装飾に使用することができ、富士吉田市が多様な織物製品を作る産地であることを伝えたいため、3台それぞれに特徴があるバスにしたいと、富士吉田市繊維産業活性化地域おこし協力隊の森口さんに、相談しました。

みんなで様々な生地を見ながら、今のバスの雰囲気や椅子の色を加味しながら、相談し、
最終的には、以下の3色に決めました。

赤色:ネクタイ地(羽田忠織物)
青色:服地(宮下織物)
黄色:傘地(舟久保織物)

森口さんから、それぞれの生地の特徴を聞いている様子。
みんなで生地を選んでいる様子。最後はピンクか水色の生地かで悩みまくり…。

07. 準備する

生地と設置場所が決まったら、そのサイズに合わせて、生地を裁断・縫製します。
家庭科の授業で使った道具を使いながら、生地をバスの大きさに揃えていきました。

生地によって、切り方が難しく糸がほつれやすかったり、切れ味が違ったり、
生地の特徴を生徒等が触れながら、1つ1つ丁寧に作って行きました。

慎重に、慎重に、慎重に。
折り目に合わせて、生地を縫う様子。

そして、完成した生地をバスに装飾しました。
飾りながら、バスがかわいくなっていく様子がとても素敵でした。

また、バス装飾に合わせて
生地や織物工場さんを紹介するため、実際に、生地を製作する織物工場さんへ訪れ、その生地の魅力や作っている商品、高校生へのメッセージなどを取材しました。

取材した内容も、それぞれでまとめ、椅子の背もたれ裏部分に掲示し、織物の魅力を伝えて行きました。

吊り革部分にみんなで装飾する様子。
広告部分に装飾する様子。シワが入らず、綺麗に見えるように掲示のが難しかった…
羽田忠織物さんに取材をしている時の様子。空間がおしゃれ…
取材時のメモ。メモ。
舟久保織物さんで生地ができる様子を見学。すごい…
実際に完成した車内の様子(赤号:ネクタイ地 羽田忠織物)
実際に完成した車内の様子(赤号:傘地 舟久保織物)
実際に完成した車内の様子(赤号:服地 宮下織物)

08. お披露目会の実施

そして、2021年11月12日。「ハタオリ号お披露目会」を実施しました。

富士吉田市長や、富士急行株式会社の社長、織物協同組合の理事長、校長先生など、
多くの皆様にお集まりいただき、ハタオリ号を作った経緯や挨拶、テープカットなどを行いました。

テープカットの様子
終わった後にみんなでハイポーズ!

(当日の代表生徒挨拶 文章抜粋)
バス完成の準備を進めていく中、富士吉田の地場産業「織物」が身近に感じ、生地を購入させて頂いた3社の織物業を営んでいる方にインダビューや工場見学をさせてもらった事によってたくさんのことを学びました。熱心に織物の事を語ってくれた方や、ハタオリフェスティバルで出店していた素敵な織物業の方がいるのに富士吉田の地場産業は私たちの中で薄れてきていると思いました。

次世代に繋げていくには若者が先陣をきって関わっていくべきだと思います。今すぐにと言うのは難しいと思いますが、私たちもできることがあれば少しずつ関わっていきたいと思います。

私達もそうですが、大人の方は尚更バスに乗る機会が少なくなっていくと思います。ですが、これを機に100円で乗車できるタウンスニカーに乗って富士吉田の産業をもっと身近に感じてもらえば嬉しいです。

本日はありがとうございました。

グループリーダーのななみの言葉に、いつも感動します。

09. ふりかえる

ハタオリ号の取り組みを通じて
生徒等は
「自分たちのアイデアが実現されて、自分で何かを発信することや伝えることの大切さを実感しました」
「いつもタウンスニーカーで乗っている友達が、バスすごいかわいいねと褒めてくれて嬉しかった。」
「とにかく取り組んでて楽しかった!またやりたい!」
などの感想をもってくれました。

また、ハタオリ号の撤収作業をしている時(2022年1月末)には、
運転手さんから「これを見た乗車した皆さんが織物について話していたり、車内のイメージが変わったねと話していたりしたよ。いい企画だね」と声をかけていただきました。

生徒たちの取り組みを多くの人に見てもらい、反応をいただけたことが、かえる舎としても、とても嬉しかったです。

富士吉田市の広報誌を始め、多くのメディアにも取り上げていただきました。

多くの皆さんの協力のおかげで、無事に大成功のハタオリ号となりました。
本当にありがとうございました。

そして、実はこのハタオリ号の取り組みですが…
翌年(2022年)にも同じくタウンスニーカーで装飾いただきました。
2022年10月に開催されたハタオリマチフェスティバル(地場産業の振興イベント)に合わせて運行させていただきました!
(やったね!)